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2026年5月の訪日外客数は355.9万人・3.6%減——中国6割減を19市場の「過去最高」が下支え

2026年5月の訪日外客数は355万9,900人・前年比3.6%減。中国60.4%減と19市場の過去最高が併存した市場構成の変化を、今後の見通しとあわせて分析します。

2026年5月インバウンド総評、訪日外客数355万9,900人

2026年5月の訪日外客数は355万9,900人、前年同月比3.6%減でした。ただ、今月の本題は総数ではありません。中国が前年から6割減る一方で、韓国・台湾・米国など19市場が5月として過去最高を更新し、市場の顔ぶれが大きく入れ替わりました。

どの市場が伸び、中国の減少をどう位置づけるべきか。増減の中身を分解し、記事公開時点からの見通しまで整理します。

なお、中国市場の振れや大都市への需要集中は2026年5月に始まった現象ではありません。本稿で確認するのは「新しい構造の発生」ではなく、既存の傾向が今月の数字にどの程度表れたかです。

訪日外客数355.9万人2026年5月推計値
前年同月比−3.6%13万3,687人減
1〜5月累計1,793.6万人前年同期比−1.1%

総評——単月は3.6%減、年初からは前年並みをやや下回る

5月単月を年ごとに比べると、2024年304万人、2025年369万人、2026年356万人です。2026年は2024年を上回る一方、2025年には届いていません。

訪日外客数の月別推移(2024年1月〜2026年12月)
訪日外客数 月別比較2024年から2026年までの訪日外客数を月別に比較。2026年は12月まで。0100万200万300万400万1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月2024年2025年2026年

2026年は12月まで。単位:人。

グラフの数値を見る
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2024年2,688,4782,788,2243,081,7813,043,0033,040,2943,140,6423,292,6022,933,3812,872,4873,312,1933,187,1753,489,888
2025年3,781,6293,258,4913,497,7553,909,1283,693,5873,377,9853,437,1183,428,4063,267,2283,896,5243,518,1953,617,791
2026年3,597,8813,466,8483,619,1593,692,3643,559,9003,148,600

日本政府観光局(JNTO)の発表では、5月は桜シーズンと夏休みの間で多くの市場の訪日需要が落ち着く時期とされ、2025年・2026年とも4月から5月に総数が減っています。前月比の低下自体は季節性を含みます。

1〜5月累計は1,793万6,000人で前年同期比1.1%減。5月だけでなく、年初から前年並みをやや下回る推移です。

市場別動向——中国の大幅減を、広く薄い増加が埋めた

「13.4万人減」の内訳

市場別の前年差を分解すると、中国の47.7万人減が突出しています。韓国・台湾の増加は合計20.4万人で中国減少分の42.7%、米国・マレーシアを加えても51.6%。残りはインド、シンガポール、ドイツなど複数市場の小さな増加の積み上げです。

2025年5月からの訪日外客数の増減寄与
中国
−47.7万人
韓国
+12.5万人
台湾
+7.8万人
米国
+2.2万人
マレーシア
+2.0万人
その他市場(純増)
+9.7万人
減少増加

つまり「中国が減り、韓国と台湾にそのまま置き換わった」という単純な構図ではありません。大きな中国減を、近距離市場と中長距離市場の広い増加で部分的に吸収した月でした。

韓国・台湾の構成比は44.0%へ——19市場で5月の過去最高

2026年5月の最大市場は韓国の95万1,300人(構成比26.7%)、次いで台湾の61万6,800人(17.3%)。両市場の合計構成比は44.0%で、前年同月の36.9%から7.1ポイント上昇しました。対照的に中国は79万人から31万3,000人へ減り、構成比は21.4%から8.8%へ低下しています。

主要市場の構成比比較

韓国+台湾は 36.9% から 44.0%+7.1ポイント

2025年05月

  • 韓国22.4%825,883人
  • 台湾14.6%538,428人
  • 中国21.4%790,089人
  • その他41.7%1,539,187人

2026年05月

  • 韓国26.7%951,300人
  • 台湾17.3%616,800人
  • 中国8.8%313,000人
  • その他47.2%1,678,800人
構成比を表で見る
年月韓国台湾中国その他韓国+台湾
2025-0522.4%14.6%21.4%41.7%36.9%
2026-0526.7%17.3%8.8%47.2%44.0%

JNTOによると、5月は韓国、台湾、米国、マレーシアなど19市場で5月として過去最高でした。マレーシア39.6%増、インド31.3%増、シンガポール21.1%増、ドイツ18.8%増など、伸びは広範囲です。総数が前年割れでも多くの市場で需要が伸びたという一見矛盾した結果は、中国の変動が全体へ与える影響の大きさを示しています。なお、これは5月単月の構成比であり、長期的な置き換わりと判断するものではありません。

中国の急減は2025年11月に始まった——5月は「継続」の月

中国市場はもともと政策、航空供給、休暇日程の影響で月ごとの振れが大きい市場です。今回の減少局面の起点は2025年11月。11月に前年の季節パターンから外れて前月比21.4%減となり、12月は33万人・前年同月比45.3%減へ急落しました。2026年に入っても前年比45〜61%減の範囲が続き、5月は31万3,000人・60.4%減です。単月の急落ではなく、12月以降の低い水準が継続していると読むのが適切です。

中国からの訪日外客数の月別推移(2024年1月〜2026年12月)
中国からの訪日外客数 月別比較2024年から2026年までの中国からの訪日外客数を月別に比較。2026年は12月まで。0100万1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月2024年2025年2026年

2026年は12月まで。単位:人。

グラフの数値を見る
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2024年416,088459,463452,525533,611545,552665,617776,520746,010652,405582,919546,339604,293
2025年980,520722,924661,817765,189790,089798,001974,5641,018,747775,657715,804562,708330,435
2026年385,519396,511291,686330,776313,000340,700

首相発言・渡航自粛要請・実績の時系列——因果は断定しない

  1. 高市首相が国会答弁

    台湾への武力攻撃や海上封鎖を例に、具体的な状況によっては「存立危機事態」になり得るとの考えを示しました。

  2. 中国当局が訪日回避を呼びかけ

    中国外交部が14日に注意喚起を行い、文化・観光部は16日に中国人旅行者へ「近期避免前往日本旅游」と呼びかけました。同部の告知は、日本の指導者による台湾関連発言にも言及しています。

  3. 中国からの訪日客は56万2,708人

    前月比21.4%減。ただし前年同月比では3.0%増であり、この月だけでは政策影響を切り分けられません。

  4. 33万435人へ減少

    前月比41.3%減、前年同月比45.3%減。前年割れが明確になりました。

  5. 中国外交部が改めて注意喚起

    中国の領事当局は、安全上の懸念を理由に日本への渡航を避けるよう改めて呼びかけました。

  6. 夏期航空ダイヤ開始

    国交省の当初計画で中国路線の国際旅客定期便は597便/週。前年夏の1,279.5便/週から53%減となりました。

  7. 訪日客は31万3,000人

    前年同月比60.4%減。JNTOは注意喚起、航空便の減少、端午節の時期のずれを減少要因に挙げています。

11月7日の衆議院予算委員会会議録で発言内容を、中国文化・観光部の11月16日付告知で渡航自粛要請と発言への言及を確認できます。両者は時系列上連続していますが、それだけで訪日客減少の全てが発言によるものと断定することはできません。旅行予約の先行期間、為替、景況、季節性なども動くためです。

航空便は半年でほぼ半減——2026年夏は前年夏比53%減

国土交通省の各期第1週の当初計画では、中国路線の国際旅客定期便は次のとおりです。

中国路線の国際旅客定期便(各期当初計画)
2025年夏
1,279.5便/週
2025年冬
1,183.5便/週
2026年夏
597便/週

国交省の2026年夏期スケジュールは2026年3月27日時点の第1週計画値で、期中に増減し得ると注記されています。月間の実運航便数や座席数ではなく、供給制約の方向と規模を測る指標です。5月の60.4%減は端午節のカレンダー要因(2025年5月末→2026年6月中旬)だけでは説明できず、需要低下と供給縮小が重なっています。発言から需要、減便へ至る寄与率を公開データだけで分離することはできないため、本稿では「渡航自粛要請後の低水準が続き、航空供給の縮小も確認された」と評価します。

今後の見通し

データは5月分までですが、本稿の公開時点(2026年7月上旬)から先の見通しを整理します。

第一に中国市場です。7月中旬公表予定の6月分で、端午節(2026年は6月中旬)明けの反発幅が確認できます。反発が小さければ、渡航自粛要請以降の需要低下が続いていると判断する材料になります。また2026年夏ダイヤ(10月下旬まで)の中国路線は前年夏比53%減で確定しているため、仮に需要が戻り始めても、夏の間は座席供給が回復の上限になります。当サイトは、夏期の中国市場は低水準が続く可能性が高いとみています。

第二に中国以外の市場です。韓国・台湾など19市場は5月として過去最高を更新しており、夏の旅行シーズンに向けてこの広い増勢が続くかが総数の行方を左右します。中国以外の増加が5月と同じ規模で続けば、総数の前年割れは小幅にとどまる計算です。市場ごとの規模と単価は市場ポートフォリオで確認できます。

なお、これらは公開データに基づく当サイトの見立てであり、為替・政策・航空供給の変化によって変わり得ます。6月分の月次総評で検証します。

今月の結論と次に確認する数字

5月は「中国の減少が始まった月」ではなく、2025年12月以降の低水準が続いた月です。一方で19市場が5月として過去最高を更新し、市場構成は韓国・台湾側へ7.1ポイント動きました。首相発言・渡航自粛要請・実績の低下は時系列上つながっていますが、公開統計だけで発言の寄与率は算出できません。

継続確認する指標は次の3点です。

  • 6月の中国からの訪日外客数と、端午節後の反発幅
  • 中国当局の渡航情報と、中国路線の計画・実運航便数
  • 韓国・台湾・米国など主要増加市場の伸びの持続性

都道府県別の宿泊動向は、自治体・DMO向けに別記事で分析しています:外国人宿泊は「地方分散」が進む——三大都市シェア56.8%へ低下(2026年3月)

算定方法

増減寄与は、2026年5月の市場別訪日外客数から2025年5月の同市場値を差し引いて算出しました。「その他市場(純増)」は、全体の前年差から中国、韓国、台湾、米国、マレーシアの前年差を除いた差額です。構成比は各市場の訪日外客数を総数で除して計算しています。本文の増減数・構成比は丸め前の実数から計算し、表示は原則として丸めています。

航空便数は、国土交通省「国際線定期便の概要」に掲載された各期当初の第1週の計画便数です。実際に運航した便数や提供座席数とは異なります。

2025年の訪日外客数は暫定値、2026年5月値はJNTO推計値です。今後の確定・改定により本文とグラフの数値が変わる場合があります。当サイトが公式統計を加工・集計しています。

出典・注記 出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」2026年5月推計値。当サイトが国・地域別、年月別に加工・集計して作成。掲載値は推計値または暫定値を含み、後日改定される場合があります。本稿の見解部分は当サイト独自の分析です。

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