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実務ガイド安全・危機対応

災害時に旅行者を安全行動へ導く——多言語情報の8項目

自治体・DMO・宿泊・交通・観光施設向けに、訪日外国人旅行者の災害・非常時対応を、役割分担、情報源、多言語表現、避難誘導、予約客連絡、訓練まで8項目で解説します。

災害時に外国人旅行者を安全行動へ導く8項目の危機対応

地震、津波、大雨、大雪、台風、火山、停電、交通途絶が起きたとき、日本語の警報文を英語や中国語へ翻訳するだけでは、外国人旅行者が安全に動けるとは限りません。「避難指示」「警戒レベル」「運転見合わせ」といった制度や用語を知らず、避難場所と避難所の違い、建物内に残るべきか外へ出るべきか、予約先へ行ってよいかを判断できないことがあります。

観光庁の災害時の対応力強化に関する取組は、自治体・DMO向けと事業者向けの観光危機管理手引き、マニュアルのひな型、情報発信テンプレートを公開しています。また、災害用語を直訳するだけでは取るべき行動が分からないとして、日・英・中・韓の「伝わる表現」用語集を提供しています。

結論は、危機対応を翻訳業務ではなく、役割→情報源→安全確保→行動文→避難→対象別連絡→代替通信→訓練の8項目で準備することです。発災後に文章を考えるのではなく、平常時に判断者、短文、掲示先、QRコード、連絡網を作ります。

準備項目8項目役割から訓練まで
初動の区切り4段階平常時・0〜15分・15〜60分・継続
公的支援24時間JNTO Japan Visitor Hotline

危機対応を8項目の一枚にする

災害種別ごとに別々の長いマニュアルを作る前に、共通する8項目を一枚へまとめます。

訪日外国人旅行者対応の8項目
項目平常時に決めること発生時の確認
想定危機地震、津波、風水害、雪、火山、停電、交通途絶今回の危機と二次災害は何か
指揮・役割統括、情報、お客様、施設、従業員、代行者誰が判断し、誰が現場を動かすか
公式情報源自治体、気象庁、交通、JNTO、施設管理者情報の発表元と時刻は何か
安全確保身を守る場所、停止設備、立入禁止今いる場所で最優先の行動は何か
伝わる表現短い行動文、ピクトグラム、対象言語説明より先に行動が伝わるか
避難・支援経路、集合、人数確認、要配慮者、備蓄誰がどこへ誘導し、誰が支援するか
対象別連絡館内客、予約客、家族、旅行会社、地域誰に何をいつ知らせるか
代替・訓練紙、電源、通信、年次訓練、修正記録一つの手段が止まっても動けるか

役割表には部署名だけでなく、担当者、代行者、連絡方法を付けます。観光庁の事業者向け手引きは、統括責任者、情報責任者、お客様対応、消火・施設、従業員、財務・経理などの機能を例示し、夜間の初動体制も別に決めるよう示しています。

情報は「何が起きたか」より「今どうするか」を先にする

外国人旅行者向けの短文は、次の5要素で作ります。

1. 現在:何が起きているか 2. 範囲:どこが対象か 3. 行動:今すぐ何をするか 4. 禁止:何をしないか 5. 次報:次の更新時刻・確認先

たとえば、地震直後に長い震度説明をする前に、「窓から離れてください」「頭を守ってください」「揺れが収まるまで外へ出ないでください」のように伝えます。津波リスクがある場所では、施設判断だけで安全を宣言せず、公式指示に従って高い場所や指定先へ移動します。

文章作成時の注意点です。

  • 一文を短くし、一文に一つの行動を書く
  • 「安全です」「問題ありません」と根拠なく断定しない
  • 地名、建物名、階、出口、集合点を具体的に書く
  • 「避難場所」「避難所」など、日本固有の概念を補足する
  • 機械翻訳だけで緊急文を確定せず、事前に標準文を確認する
  • 発表元、確認時刻、次回更新予定を付ける

観光庁の「伝わる表現」用語集は、取るべき行動が具体的かつ簡潔に伝わる表現へ見直した多言語例を提供しています。施設独自の表現を増やす前に、公式例を基礎にします。

0〜15分は安全確保と人数確認を優先する

発災直後は、ウェブ更新より目の前の安全が先です。

  • 大きな声、放送、身振り、ピクトグラムで身を守る行動を伝える
  • 火気、ガラス、落下物、エレベーター、斜面、海岸など危険箇所から離す
  • スタッフ自身の安全を確保する
  • 施設内・車内・ツアー中の旅行者数と負傷者を確認する
  • 車いす、視覚・聴覚、乳幼児、妊娠、持病など支援が必要な人を確認する
  • 統括責任者または夜間責任者へ連絡する
  • 不確かな情報を拡散せず、公式情報源を確認する

一人で動けると決めつけず、「どのような支援が必要ですか」と本人へ確認します。同行者やガイドがいる場合も、施設の避難判断と安全上の制約を共有します。

15〜60分は公式情報・避難・予約客を同期する

初期安全を確保したら、現場と外部情報をつなぎます。

  • 自治体、気象庁、消防・警察、交通事業者、施設管理者の情報を確認
  • 避難・待機・営業停止・移動中止の判断と根拠を記録
  • 館内客へ現在地、トイレ、水、電源、通信、次回案内時刻を伝える
  • 到着前の予約客へ、来訪中止・延期・別経路を連絡
  • 旅行会社、OTA、宿泊、交通、DMOへ同じ事実を共有
  • ウェブ、地図、SNS、予約画面の営業情報を必要に応じて更新
  • 家族・関係者からの照会窓口を一本化する

観光庁の手引きは、現場事業者が安全対応を優先して情報収集が難しい場合、自治体やDMOが収集した情報を活用する方法を示しています。DMOは地域共通の事実、交通、避難、営業情報を集約し、個別事業者は自施設の安全、人数、提供可否を返す役割分担が考えられます。

役割と共有項目は自治体・DMOの90日実証を回す役割・データ設計と同様に、責任者を一つに固定します。

対象別に連絡内容を変える

同じ文章を全員へ送ると、必要な行動が埋もれます。

対象別の危機情報
対象最優先の情報主な手段
施設内・ツアー中身を守る行動、避難、集合、次報声掛け、放送、掲示、スタッフ
到着前の予約客来訪可否、交通、取消・変更、連絡先メール、SMS、予約サービス
滞在中の地域旅行者危険区域、避難、交通、開設場所DMO・自治体サイト、SNS、QR
家族・関係者安否確認の方法、照会窓口専用窓口、定時更新
旅行会社・OTA催行・営業、予約対応、再開見込みBtoB連絡網、管理画面
一般・メディア確認済み事実、対象範囲、次回更新公式サイト、発表資料

予約客には「休業します」だけでなく、当日の来訪を止めるのか、別日へ変更できるのか、返金・代替の確認先を伝えます。価値・利益・在庫・取消をつなぐ商品設計で、天候・交通・事業者中止の条件と代替商品を平常時に決めておきます。

公式の多言語情報源を旅行者へ渡す

自社がすべてを翻訳する必要はありません。旅行者が自分の端末で確認できる公式情報を、QRコードと紙で用意します。

旅行者へ案内する主な公式情報
情報源主な用途運用上の注意
JNTO Safe Travel Information災害・安全・交通の最新情報対象地域と更新時刻を確認
Safety tips地震、津波、気象、噴火、避難等の通知平常時に導入案内を掲示
Japan Safe Travel公式SNS警報、交通障害、注意喚起SNSだけを唯一の情報源にしない
Japan Visitor Hotline緊急・災害・一般観光案内050-3816-2787、英・中・韓、24時間
NHK WORLD-JAPAN海外向けニュース公式発表と合わせて案内
110・119警察、消防・救急緊急度と現在地を伝える支援

JNTOのJapan Visitor Hotlineは、050-3816-2787で24時間・365日、英語・中国語・韓国語に対応し、事故、病気、災害等の支援と一般観光案内を行っています。原則として事業者向けの三者間通訳や予約代行ではないため、旅行者本人へ案内します。

通信障害と停電を前提にする

ウェブとSNSだけの計画は、停電、通信集中、端末の電池切れで止まります。

  • 多言語の初動文と避難図を紙で保管する
  • QRコードだけでなく短いURLと電話番号を併記する
  • モバイル電源、ラジオ、照明、ホワイトボードを用意する
  • 館内放送が使えない場合の声掛け・巡回担当を決める
  • 予約者一覧を必要最小限の範囲で安全に確認できるようにする
  • Wi-Fi、携帯、固定電話、無線、対面連絡の代替順を決める
  • 更新時刻を書き換えられる掲示テンプレートを用意する

観光庁の手引きも、複数の情報収集・通信手段を確保し、一つが使えなくても別手段で通信できるようにすることを勧めています。

訓練は避難だけでなく「情報」を試す

年1回の避難訓練だけでは、多言語情報と予約客対応が動くか分かりません。30〜60分の机上訓練で、次を試します。

1. 夜間または少人数時に地震が起きた設定 2. 統括責任者が不在で代行者が判断 3. 館内に英語・中国語話者と車いす利用者がいる 4. 鉄道運休と停電が重なる 5. 予約客、旅行会社、家族から連絡が入る 6. 15分後、30分後、60分後の案内文を作る

確認するのは、連絡網が通じるか、公式情報源へ到達できるか、翻訳済み短文が使えるか、避難支援と人数確認ができるか、予約・営業情報を更新できるかです。訓練後は、できなかった項目に担当と期限を付けます。

最小KPIと更新ルール

危機対応の運用KPI
指標定義確認頻度
役割充足率責任者・代行者が決まった機能÷必要機能異動時・半年
初動文整備率想定危機で利用可能な言語・媒体の割合半年
連絡網到達率訓練で時間内に連絡できた相手の割合訓練ごと
避難・人数確認時間安全確保から人数把握までの時間訓練・実発生
予約客連絡率連絡完了予約÷対象予約実発生
情報更新間隔前回発信から次回発信まで実発生
訓練改善完了率期限内に直した課題÷全課題四半期

危機対応計画は、担当者・連絡先・避難経路・公式URLの変更時に更新し、少なくとも年1回は訓練します。台風、大雪、火山、繁忙期など地域特有のリスクは、シーズン前に確認します。実際の災害時は、本稿ではなく最新の公式指示を優先してください。

出典・注記 出典:観光庁「災害時の対応力強化に関する取組」。観光庁の観光危機管理計画・事業者向け手引き、「伝わる表現」用語集、JNTOの安全情報を参照し、現場が平常時に準備する8項目と初動手順へ当サイトが再構成しました。実際の災害時は国・自治体・警察・消防・気象・施設管理者等の公式指示を優先してください。

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