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消費・不満・再訪を15問で測る来訪者アンケート設計

自治体・DMO・観光事業者向けに、インバウンド来訪者アンケートの目的、15問の設問、抽出・回収、集計、偏り、個人情報、30日運用を解説します。

市場、泊数、消費、満足、不満、再訪を15問でつなぐ来訪者アンケート

来訪者アンケートで「今回の滞在に満足しましたか」と5段階で聞き、満足・大変満足の割合を報告しても、次の施策は決まりません。満足度が80%でも、予約しにくいのか、泊数が短いのか、体験へ支出していないのか、再訪意向がないのかが分からないためです。

観光庁のDMOによるKGI・KPI計測に係る手引書は、来訪者満足度を5段階で測り、旅行消費額の調査の中で平均泊数、リピーター率、再来訪意向などと併せて把握することが効率的としています。また、特定施設だけで調査すると、その施設利用者と施設満足へ偏る点に注意を求めています。

結論は、満足度を単独で聞かず、誰が来たか→どう予約したか→どれだけ滞在・消費したか→何が良く・悪かったか→次に何をするかを15問でつなぐことです。すべてを長い調査へ入れるのではなく、毎回使う共通設問と、施策ごとの追加設問を分けます。

共通設問15問市場から再訪まで
回答時間の目安5分以内選択式中心+自由記述1問
公式手引書の目安1,000件以上独立した地域調査の場合

最初に「何を変える調査か」を一文で決める

設問を作る前に、調査結果で変える意思決定を決めます。

  • 台湾リピーターの地方2泊商品を改善する
  • 米国初訪日客の予約前不安を減らす
  • 地域内の体験・飲食消費を増やす
  • 駅から観光地までの移動案内を改善する
  • 冬の満足と再訪意向を高める

「来訪者の実態を把握する」のような広い目的では、設問が増え、誰も使わない結果になります。目的ごとに、主要KPIを1〜3個、改善担当を決めます。

インバウンドKPIを売上・宿泊・満足・地域還元へつなぐ設計で、調査値をどの階層へ置くか確認します。満足度は最終目的ではなく、消費、再訪、紹介、地域の持続性へつながる顧客成果です。

共通15問を作る

回答時間は5分以内を目安にし、選択式を中心にします。自由記述は、改善点を具体化する1問へ絞ります。

来訪者アンケートの共通15問
番号聞くこと回答形式使い道
1居住国・地域、主な利用言語選択市場・言語別比較
2旅行目的、同行者複数選択観光・業務、家族等の違い
3日本・当該地域への訪問回数選択初訪日・地域リピーターを分ける
4今回の主な訪問地・周遊経路選択+任意地域間移動と立寄り
5当該地域の宿泊数数値・選択日帰り、1泊、連泊を分ける
6情報を知った経路複数選択検索、SNS、口コミ、旅行会社等
7予約・購入した経路選択直販、OTA、旅行会社、現地
8利用した商品・場所複数選択宿泊、体験、飲食、小売、交通
9地域内での支出費目別の金額帯消費構造と未購入分野
10総合満足度5段階定点KPI
11要素別の満足度・重要度5段階交通、情報、商品、接客等の優先度
12予約前・滞在中の困りごと複数選択情報、決済、言語、移動等の原因
13最も改善してほしいこと自由記述1問選択肢で拾えない具体的課題
14再訪意向・推奨意向5段階再訪・紹介の先行指標
15次回関心と任意の連絡同意選択+任意季節・地域・商品提案

15問目の連絡同意は、回答分析と販促連絡を分け、任意にします。連絡先を収集しない匿名調査でも、1〜14問で改善は可能です。

市場と訪問回数を必ず分ける

同じ満足度でも、初訪日客と地域リピーターでは意味が違います。

  • 初訪日客:情報、アクセス、決済、文化的な期待差が課題になりやすい
  • 訪日リピーター:新しい地域・季節・テーマが再訪理由になる
  • 地域初訪問:入口、移動、定番商品の分かりやすさが重要
  • 地域リピーター:混雑、変化、深い体験、関係性が重要

居住地だけでなく、日本訪問回数と地域訪問回数を分けます。「日本は5回目だが、この地域は初めて」という旅行者を同じリピーターにまとめないためです。

市場の基礎値は市場ポートフォリオ、来訪・滞在・再訪の相対的な弱点はジャーニー診断で確認し、アンケートは地域・事業固有の理由を補います。

消費は総額だけでなく費目別に聞く

「今回いくら使いましたか」と総額だけを聞くと、宿泊を含むか、地域外の交通を含むか、同行者全体か一人分かが揃いません。

最初に次を明記します。

  • 対象地域
  • 対象期間
  • 1人分か同行者全体か
  • 予約済み・支払済み・予定のどれか
  • 通貨

費目は、宿泊、飲食、地域交通、体験・入場、買物、その他へ分けます。正確な金額が答えにくい場合は、金額帯を使います。高額回答の影響が大きいため、平均だけでなく中央値、回答数、未回答率も確認します。

1人当たり地域内消費額 = 対象地域内の回答者消費額合計 ÷ 有効回答者数

同行者全体額で聞く場合は、人数で割る条件を統一します。全国のインバウンド消費単価を地域の実績として使わず、地域内の費目と購入率を把握します。

満足度は「重要度」と原因を組み合わせる

要素別満足度は多すぎると回答負担になります。調査目的に合わせ、5〜8項目へ絞ります。

  • 到達・地域内交通
  • 予約・決済
  • 多言語情報
  • 宿泊・飲食・体験の品質
  • スタッフ対応
  • 価格と価値
  • 混雑・清潔・安全
  • 地域文化・自然への配慮

満足度だけでなく、その要素が旅行者にとって重要だったかを聞くと優先順位を付けられます。

満足度と重要度の読み方
重要度満足度判断
高い低い最優先で改善
高い高い強みとして維持・訴求
低い低い費用対効果を見て改善
低い高い過剰提供でないか確認

自由記述は、星や点数の理由を特定するために使います。口コミを不満分類・返信・改善・再訪へつなぐ運用と同じ8分類を使うと、公開口コミとアンケートを同じ改善表へ統合できます。

再訪意向は「次に何をしたいか」まで聞く

「また来たいですか」だけでは、具体的な商品へつながりません。再訪意向に加え、次の関心を選んでもらいます。

  • 異なる季節
  • 今回行けなかった周辺地域
  • 食、文化、自然、アクティビティ
  • 長期滞在・ワーケーション
  • 家族・友人との再訪
  • 少人数・高付加価値商品
  • イベント・祭り

再訪意向が高くても、次の商品、情報接点、許諾済みの連絡手段がなければ予約になりません。連絡を希望する人だけに、利用目的、配信内容、解除方法を示します。

回収場所の偏りを記録する

観光庁の手引書は、特定施設だけで調査すると、その施設利用者と施設への満足へ偏る点に注意を求めています。地域調査では、次を分散します。

  • 空港・駅・港などの出入口
  • 宿泊施設
  • 観光案内所
  • 体験・文化施設
  • 飲食・商業エリア
  • 地域サイト・予約後メール

さらに、平日・休日、朝・昼・夜、繁忙・閑散、晴天・悪天候、主要言語を記録します。QRコードだけでは、スマートフォン、通信、回答意欲のある人へ偏ります。対面、紙、ウェブを組み合わせ、回収方法を結果と一緒に残します。

1,000件はすべての調査の必須条件ではない

観光庁の手引書は、市町村の意識調査等から独立して地域の来訪者満足度調査を行う場合、1,000サンプル以上を目安としています。一方、事業者が毎月の改善仮説を探る小規模調査では、少数回答にも価値があります。

ただし、30人の回答を「地域来訪者の80%が満足」と一般化しません。「対象施設で回答した30人中24人」のように、対象、期間、場所、回答数を明記します。公式KPIや母集団推計に使う場合は、統計の専門家と標本設計を行います。

集計は全体平均より「差」を見る

最低限、次の切り口で比較します。

  • 市場・言語
  • 初訪日・訪日リピーター
  • 地域初訪問・地域リピーター
  • 日帰り・1泊・2泊以上
  • 予約チャネル
  • 利用商品
  • 繁忙・閑散

たとえば、全体満足度は高いが、初訪日客だけアクセス満足が低い、地域リピーターは満足だが次回商品が見つからない、OTA利用者は予約しやすいが直販より利益が低い、といった差を見ます。

満足率 =「大変満足・満足」の有効回答数 ÷ 満足度の有効回答数

再訪意向率 =「必ず・おそらく再訪」の有効回答数 ÷ 再訪意向の有効回答数

分母、無回答、複数回答、集計除外を記録します。母数が小さい区分は率だけでなく実数を併記します。

個人情報を持たなくても改善できる

市場、泊数、消費、満足、不満の分析に、氏名、正確な住所、パスポート番号は通常不要です。

  • 匿名回答を基本にする
  • 回答目的、利用範囲、保管期間を示す
  • 連絡先は任意かつ調査回答と分けて管理する
  • 自由記述へ予約番号・健康情報等を書かないよう案内する
  • 委託先、閲覧権限、削除方法を決める
  • 少数属性の組み合わせで個人が推測されないよう集計する

商品改善とメール配信の同意を一つにまとめません。法令、自治体規程、各サービス規約、越境データの扱いが関係する場合は専門家へ確認します。

30日で調査を回す

1〜5日:意思決定と設問

  • 変える施策とKPIを決める
  • 共通15問から不要項目を削る
  • 対象言語と回答時間を確認する

6〜10日:小規模テスト

  • 5〜10人に回答してもらう
  • 誤訳、選択肢不足、回答不能、所要時間を確認する
  • スタッフの説明が回答を誘導していないか見る

11〜25日:回収

  • 場所、曜日、時間を分散する
  • 回収場所・方法・回答言語を記録する
  • 毎週、未回答が多い設問を確認する

26〜30日:集計と改善

  • 全体と主要区分の差を確認する
  • 上位3課題へ担当・期限・改善方法を付ける
  • 次回も同じ定義で測る設問を固定する

調査結果の会議では、グラフの報告ではなく「誰の、どの場面を、いつまでにどう変えるか」を決めます。

更新ルール

総合満足、泊数、消費、再訪意向などの共通設問は年度内で定義を固定し、月次・四半期の改善設問だけを入れ替えます。翻訳、選択肢、回収場所を変えた場合は変更日を記録します。公式KPIとして年次比較する場合は、対象、時期、場所、方法をできるだけ揃えます。

出典・注記 出典:観光庁「DMOによるKGI・KPI計測に係る手引書 ver1.0」。観光庁のKGI・KPI計測手引書を参照し、地域・事業者が改善に使える15問の最小アンケートへ当サイトが再構成しました。公式KPIや母集団推計に使用する調査は、標本設計、回収方法、集計、個人情報について統計・法務等の専門家へ確認してください。

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